『うる星やつら』『めぞん一刻』『犬夜叉』など大ヒットを生み出した高橋留美子がいかに天才かわかるエピソードをまとめてみた。
ヒット率がほぼ100%
高橋留美子は、連載作品でほぼ全てヒットさせてきた唯一の天才作家である。
しかも、作品数が膨大なところが、寡作である鳥山明や大友克洋と異なる点だ。
主要な作品の発行部数は下記だ。
- うる星やつら 3500万部
- めぞん一刻 2500万部
- らんま1/2 5500万部
- 犬夜叉 5000万部
正にヒット作を出し続ける天才だ。
漫画家であり評論家の山田玲司はこう高橋留美子のヒット率の凄さをこう評している。
山田:手塚治虫だってね、(ヒットさせたのは)3割くらいですからね。こんなに何描いても当てる人はなかなかいないですよ。(山田玲司のヤングサンデーより)
高橋留美子は、2017年「境界のRINNE」35巻で、
作品の累計発行部数2億部の大台を突破した。
小学館でコミックスを刊行しているマンガ家で、累計発行部数が2億部を突破するのは「タッチ」で知られるあだち充さんに続き、2人目となった。

尋常ではない作画スピード
高橋留美子の凄さとして挙げられるのが「圧倒的な作画スピード」だ。
[毎日19時アップ]高橋留美子先生Q&Aその2(再掲載)
「漫画を1話完成させるのに何日ほどかかるのでしょうか?」 pic.twitter.com/fYtnvQPr36— 高橋留美子情報 (@rumicworld1010) June 2, 2021
上記はツイッターで話題となった高橋留美子のインタビューだ。
ペン入れ20分など作画スピードが尋常でないことがわかる。
また、漫画家の目白花子は高橋が『うる星やつら』の原稿を27時間で完成させたことがあるとも語っている。
『らんま1/2』の頃は毎回16ページを2日で完成させた。
『犬夜叉』連載時にも下描・ペン入れを2日、つまり1ページにつき1時間で完成させているという伝説も有名だ。
通常、週刊連載は締切ギリギリまでかかる漫画家がほとんどであることを考えると、
高橋の作画スピードが尋常でないことがよくわかる。

努力・根性・命がけのテーマを終わらせた
高橋留美子の凄さは作品に持たせたテーマ性にもある。
漫画家・評論家の山田玲司は、高橋留美子が1978年にデビューして、それまでの漫画界を覆っていた努力・根性・命がけののテーマを終わらせたと語っている。
当時のジャンプ、サンデーでは、
熱き男たちの戦い(男組・ヒット・エンド・ラン・さいとうたかお)が描かれる傾向があったが、
高橋留美子はたった一人でギャグとラブコメの作品を繰り出して、時代を終わらせたとまで言われているのだ。
高橋留美子が起こした革命
コメディーだがアウトサイダーを描いた進歩主義
「日本は、違いを受け入れない(出るくいは打たれる)社会だ。そのなかで、高橋留美子はアウトサイダーや変人を前面に押し出し、彼らにもチャンスがあることを示そうとこだわっていた」(アングレーム国際漫画祭 高橋留美子受賞の理由)
上記は、ヨーロッパ最大の漫画の祭典『アングレーム国際漫画祭』で高橋留美子がグランプリを受賞した際の、主催者の高橋留美子評である。
主人公の男の子が冷水を浴びるたびに女の子に変身してしまう高橋留美子の代表作『らんま1/2』は海外でジェンダーフルイドを描いた革新的なアニメであると再評価されているらしい。
また、『うる星やつら』の登場人物、藤波竜之介は
顔や体が女性なのに、男性として父親から育てられたという背景を持つキャラクターだ。
そんなアウトサイダーやセクシャルマイノリティを作品の中でユーモアを交えて楽しく描いた点に
高橋留美子の凄さはある。

女性による女性性の賛美
漫画家・評論家の山田玲司は、高橋留美子の革命はいくつもあるが、何と言っても「女性による女性性の賛美」を描いたことであると評している。
山田:つまり、ジェンダーの問題。1970年代に「ウーマンリブ」とか「女性解放運動」とかで女達は闘ってたんですよね。でも暗かったし、戦闘的だし男性的なやり方をしてたところがあるんですよ。戦い方が。でも女が女であることを誇っている賛美していること、これ新しかったんです。女性が女性であることって素敵だよねってやるわけなんですよ(山田玲司のヤングサンデーより)
※ウーマン・リブとは1960年代後半~1970年代にかけて、ヨーロッパ、アメリカ、日本で起こった女性解放運動。現在のフェミニズム及びジェンダーの原点ともいわれている。
まとめ
漫画家、高橋留美子の凄さを調べると下記のようなことがわかりました。
●ヒット率がほぼ100%
●尋常ではない作画スピード
●努力、根性がテーマの少年マンガの時代をギャグとラブコメで終わらせた
●アウトサイダーや変人を描いた先駆者
●女性性の賛美を描いた先駆者