『HUNTER×HUNTER』作者 冨樫義博がいかに天才かわかる関係者の声・エピソードまとめ

天才

『HUNTER×HUNTER』作者 冨樫義博が天才であることがわかる関係者の声・エピソードや、冨樫の独特の創作法についてまとめてみた。

目次

岡田斗司夫(オタキング・評論家)

元ガイナックス社長、評論家として知られる岡田斗司夫は、冨樫が描いた『HUNTER×HUNTER』キメラアント篇は、作者の能力を越えて「計算違いなほどによくできた傑作」だと語っている。

キメラアント編で超えられない壁をつくってしまった

岡田:キメラアント編。特にラストにかけての王とは何か?人々の頂点に立つとは何か?人間の悪意とは何なのか?みたいな一連の話っていうのは冨樫さんの漫画家としてのポテンシャルを超えてたような気がするんですよね。(2021年10月 YouTube 岡田斗司夫ゼミより)

冨樫は、計算外れに凄いものをキメラアント編で描いてしまったがために、

その後の『会長選挙・アルカ編』などは、面白いのにも関わらず『キメラアント編』と比べると、失速してしまっているようにも見える。

『ワンピース』では、エースの処刑を巡る頂上決戦が描かれた『マリンフォード編』、『ドラゴンボール』では『フリーザ』編など

作者の想像を超えてあまりにも面白くなりすぎたがために、その後その面白さを超えられないということはよくある。

『ハンターハンター』では、それが『キメラアント編』であり、しかも計算違いなほどの盛り上がりを見せたのだった。

キメラアント編は残酷過ぎて冨樫でないとJUMPに載せられなかった

圧倒的な残酷描写が続くキメラアント編だが、冨樫だからこそJUMPにギリギリ載せることができるレベルに留めることができたと岡田は語る。

残酷すぎるが、読者の子どもたちに気を遣って「わかる話」の中にちゃんと納めた点が冨樫の凄さである。

ちなみに『キメラアント編』の残酷描写は、冨樫が当時読んで絶賛していた『エルフェンリート』(岡本倫)から大きな影響を受けているそうです。

山田玲司(漫画家)

漫画家で批評家の山田玲司は、「時代に合わせてヒットするモチーフ」を見つけて作品をチューニングする上手さが冨樫作品がヒットし続ける理由であると分析している。

山田は、『HUNTER×HUNTER』の連載開始と社会の動きの連動をこう語る。

1998年『HUNTER×HUNTER』連載開始

『HUNTER×HUNTER』は連載開始当初流行っていた『ポケモン』のストーリーの始まり方と似ていると語る。

山田:最初ポケモンみたいな感じで始まるのよ。仲間ができて、ジムに行って、ハンターという抽象的なものになるっていう。父ちゃんと同じハンターに!ってこれRPGのスタートといっしょで。凄いのが、このあと資格試験が始まるのよ。学校内バトル。この後、『ハリー・ポッター』も『NARUTO』も『バトル・ロワイアル』もそうだし。(YouTube 山田玲司のヤングサンデー 冨樫義博が読まれる理由 より)

1996年『ポケットモンスター赤・緑』発表、その後1998年に『HUNTER×HUNTER』が連載を開始した。

読んでいる方は、わかると思いますが、『ハンターハンター』の序盤は、『ポケモン』そのものな感じで始まります(笑)その後、冨樫が描いたゲームの世界を舞台にした『グリードアイランド編』からもわかるように、相当のゲーム好きですね。

2003~2011年  『キメラアント篇』連載

さらに岡田斗司夫も絶賛している『HUNTER×HUNTER』(キメラアント編(2003~2011年連載)は、その後の『進撃の巨人』の大ヒットにもつながる「食われる人間」という時代の恐怖感にしっかりとチューニングされていると言う。

山田:2003年にキメラアント編で「食われる人間」という時代の恐怖感、生々しさっていうのが『進撃の巨人』につながってきたり(山田玲司のヤングサンデー 冨樫義博が読まれる理由 より)

『キメラアント編』連載開始の翌年は、頭脳戦による残酷な世界を描いた『DEATH NOTE』が始まっていますね。この時代に、恐怖感を描いた作品が続出しています。

2011~2012年『会長選挙・十二支ん篇』連載開始

2011~2012年に連載された『会長選挙・十二支ん篇』は当時、大ブレイクしていたAKB48の選挙をモチーフにしたものだと山田は分析している。

山田:びっくりするのが『選挙』やるんだよね?十二支ん編ですか?AKB全盛期だよね。それもいけんの(笑)!?っていう。(山田玲司のヤングサンデー 冨樫義博が読まれる理由 より)

染宮 愛子(漫画シナリオ研究家)

漫画シナリオ研究家の染宮は、冨樫義博の凄さは「展開の読めなさ」と「異常な密度の設定解説」にあると言う。

考察合戦が繰り広げられる展開の読めなさ

HUNTER×HUNTER』を代表とする冨樫作品の最大の魅力は、「先の展開が読めない」「裏切られる」点にあるだろう。

連載休止期間中も、読者の間で考察合戦が繰り広げられることとなる。

染宮:HUNTER×HUNTERは最悪とは言わずとも斜め上の展開が来ることが多いため、その「読めなさ」を読者は楽しんでいる節がある。この状態で連載が中断すると、読者はミステリの種明かしを待つ状態になり、それぞれ考察を繰り広げて楽しむことができる。(2017年6月11日 東洋経済オンライン HUNTER×HUNTERが休載がちでも人気の理由https://toyokeizai.net/articles/-/175168?page=2より

岸本斉史(漫画家)

『NARUTO』で知られる漫画家 岸本斉史は、冨樫との対談で『HUNTER×HUNTER』をこう評している。

週刊連載の中であれを作るのは化け物

岸本は『グリードアイランド篇』のゲーム内のルールの細かさを週刊連載の中で作りあげた冨樫を「化け物」だと絶賛している。

岸本:あれすごかったですよね、きっちりルール決めて。週刊連載の中であれを作るって、化け物だなって思いました。新しかった。(ジャンプGIGA対談より)

岸本の『NARUTO』の序盤は、『HUNTER×HUNTER』に大きな影響を受けていると考えられる。

・ハンター試験(HUNTER×HUNTER)と中忍試験(NARUTO)

・キルアとサスケの共通点

など明らかに冨樫へのリスペクトの想いから明確にストーリーやキャラクター設定を引用しているように見える。

『ハンターハンター』の念と『NARUTO』のチャクラも驚くほど設定が類似していますね。

『呪術廻戦』に大きな影響を与えている

『呪術廻戦』の作者である芥見下々は『BLEACH』の影響を受けたと語っていることが多いのだが、

芥見は『BLEACH』の作者、久保帯人との対談で「本当は冨樫さんの影響だろ?」とつっこまれている。

芥見:ちゃんとお話するのは今回が初めてですが、一度「ジャンプ展」でご挨拶させて頂きました。

久保:軽くね。その時『BLEACH』に影響を受けて「マンガを始めたんです」って言ってくれたんだけど、「いや、冨樫さんだろ」と返したのが最初かな(笑)(呪術廻戦公式ファンブックより)

芥見下々は絵の構図、キャラクターの顔の表現、ポージングまで冨樫の影響を大きく受けているようだ。

こちらの比較サイトを見ると、驚くほど似ていることがよくわかります。

https://www.kenblog2.com/akutami-hunter/

芥見下々は、1992年生まれなのでハンターハンター』ドンピシャ世代です。学生時代から愛読していたんでしょうね。

天才 冨樫義博の創作法

前述した通り、『HUNTER×HUNTER』がいくら休載を繰り返しても、ファンが離れないのはその「展開の読めなさ」にある。

冨樫は話作りのセオリーはあるものの、意識的に常に結末の見えない方向に話を進めてきたという。

なぜ、冨樫はそんな作劇ができるのか?『NARUTO』の作者である岸本斉史との対談で冨樫は自身の創作法を種明かししている。

結局は漫画にしろ小説にしろ「インプット量」

冨樫は、創作の勘を鍛えるためには、漫画や小説、映画あらゆるもののインプット量でしかないと断言している。

すでに世に出ているストーリーやキャラクターのアイデアを知ることで初めて、そのアレンジも逆張りも可能になると言う。

冨樫:結局は漫画にしろ小説にしろ「読書量」という話で。名作も駄作もたくさん読んだからこそ、既出アイデアのアレンジや、逆張りもできるので、選択肢が増やせる。(ジャンプGIGA対談より)

冨樫は『黒子のバスケ』の作者、藤巻忠俊との対談でも自身の独特の創作法を語っている。

ちなみにこの対談は、藤巻自身が大きな影響を受けた冨樫にダメ元でしたオファーで実現したと言う。

自分の絵を持たない

冨樫は藤巻より、「絵のこだわりは何か?」と問われた際に、「特にない」と答えながらも、唯一こだわっていると言えるのは、「自分の絵を持たない」ことだと語っている。

冨樫:強いて言えば『自分の絵を持たない』ことでしょうか。その時に描いているシリーズを一番活かせる絵柄に、そと都度近づけるようにしています。で、作品が変われば当然絵も変えていく。(冨樫義博×藤巻忠俊 『キセキの対談』より)

あえて『縛り』を設ける

冨樫は、『レベルE』で、アシスタントをつけずに1人で描き切ろうとすることや、

『HUNTER×HUNTER』でスクリーントーンを使わずに描き切ろうとするなど、自分に縛りを設けることで知られている。

冨樫はそうした「縛り」を設ける理由について、作品をブレさせないためだと語っている。

冨樫:ぶれるんですよね。縛りがないと。その週に観た映画なりが面白いと、試してみたくなる。だから、ブレーキをかけるという意味もあります。(冨樫義博×藤巻忠俊 『キセキの対談』より)

喜怒哀楽の入り混じった表情の表現

冨樫の絵の表現の特徴の一つとして、キャラクターの喜怒哀楽がぱっと見ではわからない表現の多用が挙げられるだろう。

冨樫は藤巻との対談で、その表現は意図的なのか?と問われ、こう語っている。

冨樫:おそらく意図的ですね。アルカイックスマイルというんですが、喜怒哀楽の入り混じった微妙な表情の描き方はこだわりを持っています。口角はその表情を描くには一番やりやすい部位なんですよ。

(冨樫義博×藤巻忠俊 『キセキの対談』より)

 

まとめ

冨樫義博の凄さを調べると下記のようなことがわかりました。

●冨樫義博は『ハンターハンター』キメラアント編で、漫画家としての限界を超えた傑作を生み出した

●冨樫の凄さは、時代に応じて柔軟に作品のテーマを変えられること

●冨樫の凄さは、展開が読めないストーリーの凄さと、異常な密度の設定

●冨樫の創作法

 何をつくるにも、結局は読書量

 自分の絵を持たない

 作品にあえて縛りを設ける

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